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執筆者の写真ハウザー=コンカルネ

機材レビュー:Digitech GSP2112

気まぐれギターエフェクターレビューVol.2

DIGITECHのGSP2112


おはこんばんにちは、ハウザーです。前回の記事を読んで頂いた皆様、ありがとうございます。そして初めてクリックして頂いた方も、ありがとうございます。

やはりネットのレビューが少ないものを取り上げると、アクセス数が多いですね〜。それだけ、気になってる人は必死にリサーチしているんだと思います笑

そんな方々の為にも、レビューを定期的に続けていきたいなと思います。

このラック式のプリアンプには大変お世話になっているので、詳しい解説を交えながらレビューしていきます。



1.ラック式エフェクターの特徴


写真を見る限り足で踏むタイプではないことがお分かりかと思います。これはラックにマウントして使うタイプのエフェクターなんです。そもそもの始まりは、80〜90年代に、スタジオミュージシャン達(レコーディングを主な生業とする演奏家)がライブの会場でも使い出したのがきっかけで世に多くのラック式エフェクターが広まりました。なぜ彼らがこぞってラック式を使ったかというと、次のような利点があったからです。

・高品位な音質←これ重要

・細かい設定が可能

・MIDI制御で複雑なコントロールも簡単に出来る

・会場のアンプに左右されず、何処でも自分の音を出せる

要するに「ライブでもスタジオと同じクオリティの音で演奏したい!」という想いからわざわざステージに、冷蔵庫並みにデカいラックシステムを持ってきたわけです。それがアマチュアにも広まり、ラック式エフェクターの需要は高まる一方でした。



2."オールインワン"のエフェクターを目指して

ハウザーが所有するこのラックは、90年代にアメリカのDIGITECH社が総力を挙げて設計した万能型マルチエフェクターという分類になります。それまでは一つのラックに限られた機能しか搭載できなかったものを、技術の進歩によってギタリストが求めるもの全てを詰め込めるようになったのです。このような万能機は各メーカーから出ていますが、DIGITECHが発表したGSPシリーズは特に、当時としては最高峰の音質と機能性を有していたと言えます。



3.究極のマルチエフェクター、GSP2000番台シリーズ]


DIGITECHは、名前の通りデジタル系エフェクトの品質に定評のあるメーカーです。しかしながら、ギターアンプのアナログライクな音を90年代にデジタルで再現することは当然難しいお話でした。

そこで、ギターアンプのセクションは真空管2本を使用したアナログ回路にする事でほぼアンプ同様の音でありつつ、エフェクトは綺麗なデジタルサウンドを両立したわけです。

これはかなり画期的で、後に他のメーカーから出てきたものも同じシステムの物が多くあります。

使える音色は4種類。温かみのあるファットなクリーン、キレの良いスッキリしたブライトなクリーン、アンプの自然なドライブ感を再現したオーバードライブ、適度なコンプレッションが効いた芯のあるディストーションがあります。

回路設計からして実際に真空管をドライブさせてるわけではなさそうですが、少なからずギターから来た信号を増幅しているのは間違いないです。その為、プリアンプ部の完成度は圧倒的です。真空管アンプ特有の音の立ち上がり方、歪み方、音の立体感、全てが今現在でも通用するレベルに仕上がっています。

でもプリアンプ部はこれだけで終わりません。なんと、ソリッドステートの回路(真空管を使わない回路)も用意されているのです!柔らかいオーバードライブ、強烈かつきめ細かいファズ、バイト感の強いドンシャリ系ディストーション、艶やかで伸びの良いリードトーンと4種類。

イコライザは当然ながら各チャンネル毎に用意されており、10バンドによる細かな設定が可能。ファクトリープリセットもそこそこ使えます(この部分はデジタル)。

以上の2回路×4チャンネルのプリアンプを自由に使う事が出来ます。どちらか片方だけを使うのも良し、音をミックスしてユニークなサウンドを作るもよし。更には、完全独立回路なのでPanフェーダーで左右に振ったり、エクスプレッションペダルに各ボリュームをアサインして音をモーフィングすることも出来たりします。

アナログセクションえでは他にもコンプレッサー、ワウ(3種類)、FXループという基本装備が付いています。この辺はGSPシリーズ共通の機能ですね。



4.現行のマルチエフェクターと張り合えそうなGSP2112


では、デジタルのエフェクトセクションはどうでしょうか。音質/機能共に未だに使えるレベル、というより安いフロア型マルチエフェクターよりよっぽど優れていると思います。以下、搭載されているエフェクト/機能と個人的な感想です。

◎揺れモノ系

・コーラス...最大で8つまで音の定位を設定出来るのでステレオで出力した時の立体感が素晴らしい。とことん綺麗な音しか出ないが、頑張ればエグい音も出せる。ピッキングの強弱でかかり具合を調整する機能があるので、アルペジオをやる時なんか便利。

・フランジャー...可もなく不可もなしな音。また、使い方によってはクセのあるコーラスみたいな感じで使えるので便利。

・フェイザー...こちらも可もなく不可もなし。無難な音なので、特定のアナログフェイザーで聴けるようなキチ◯イじみた音は出ない。

・トレモロ...こちらも(ry

・ロータリースピーカー...やはり無難に出来ている。当然だが、ライン録りの時以外はあまり効果を実感出来ない。もう少し立体感があれば良かった。

デチューナー...音を揺らすのではなく、ピッチを少しずらすことでコーラスには出せないダークな質感を表現できる。揺れモノのメインFXの前に少しかけておくと独特の雰囲気を演出出来る。痒いところに手を届かせてくれるやつ。

◎ピッチシフト系

・ワーミー...DIGITECHと言えばこれ。使い心地は昔のペダル版とほぼ同じ。割とレイテンシーが気になる辺りが、当時の技術の限界を窺わせる。とはいえ使用には充分耐えうるレベルにスムーズなピッチシフトを実現している。

・ピッチシフター...最大で8ボイスまで音を重ねる事が出来る上に、定位も各シフト音ごとに設定出来る。ほぼ狂いなくピッチシフトし、レイテンシーも許容範囲。オクターバーとして使ったり、ちょっとしたハモりに使ったりも良いが、クリーンサウンドの時にDry音を0にすれば手軽にダウンチューニングを再現出来る。歪み系でやるのは流石に無理がある。

・ハーモナイザー...当時最強クラスの精度を誇ったであろうハモり専用エフェクト。もちろん未だに現役レベル。ただし原音と合わせて2ボイスまでしかハモれないのでスタンダードな使い方しか出来ない。この辺も90年代の精一杯だったのだろう。

◎空間系

・ディレイ...合計で9種類くらい選べるのでどれを使えばいいのか最初は迷う。どれも綺麗にかかるし設定の幅も広い。が、良くも悪くも原音とは別に鳴ってる感じがする。ディレイ音が原音に絡みつくような効き方ではないのでステレオで出力時はリバーブとセットで使わないと奥行き感が出ない。一応、アナログディレイを再現したモードもあるが、なんちゃって程度の音質なので大して使えない。また、ロングディレイの機能は使い方によってはルーパーとしても使えるので、トリッキーな演出も自由自在。

・リバーブ...こちらも沢山の種類や残響する環境を選べるので自由度が高い。透明度が高く、広がり/奥行き共に素晴らしい完成度となっている。デジタルリバーブのお手本のような質感。ギター以外にも、ボーカルに使っても良い効果が期待出来る。ゲートリバーブも搭載しており、設定次第ではリバース効果も使える。欠点を挙げるなら、とことんデジタル臭い音なのでアナログ至上主義な人が聴くとアナフィラキシーショックが出てしまうところくらい(大嘘

◎その他エフェクト/機能

・ノイズゲート...無難に作動する。強くかけ過ぎない限りは音質に変化もないので基本的に常時ON。

・オートパン...自動で音が左右に移動するように設定出来る。レコーディング向けの機能。 例えばエフェクト音だけを移動させる事も出来るのでトリッキーな演出に使える。

・イコライザ...プリアンプセクションのEQだけでは追い込みが足りない人の為に最大で31バンドが用意されている。かなり追い込んだ音作りが可能になるが、弄りすぎると結局は最初の方が良かったんじゃね?という錯覚に陥る。そんな時、次の機能が役に立つ。

・編集前の音と比較...プリセット編集中にEditボタンを押すと元のデータで音を出せる。これのおかげで、音を弄りすぎて迷走した時は賢者タイムに入る事が出来る。

・タップテンポ機能...当たり前だが、本体スイッチ/MIDIコントローラー等で出来る。

・キャビネットシミュレーター...10種類のキャビネットがあり、ラインで直接ミキサーに挿しても大丈夫!と言いたいところだが、この機能だけは使い物にならない。どんなにEQで追い込んだり、空間系で奥行きを出してもライン録り臭さがぷんぷんする。でもクリーンサウンドには結構使えるのでたまにこれで録る事がある。

・シームレスチェンジ...プリセットを移動した時、前のプリセットの残響音とかを残す事で自然な音の切り替えを実現している。ライブ向けの機能。

・ソロブースト...音量をそのまま6dBブーストする機能。これもライブ向けの機能。ステージではめっちゃ重宝する。

・フロントパネルにも3バンドEQが付いている...スタジオやライブハウスで、咄嗟に音を弄る必要がある際に使える。プリセット全体or一つのプリセットだけに影響するか選べるのも便利。

以上のエフェクト/機能の充実っぷりを見ると、現行のハイエンドなマルチエフェクターに引けを取らない性能があると解りますね。

ちなみにパネルを開けて真空管を交換した事があるのですが、製造年が裏蓋に書いてありました。1997年だそうです...。

20年前以上の機材がなぜ未だに現役レベルを維持できているのか?当時の定価で16万円という高級機材だったからでしょう。

デジタルエフェクターにとって一番重要な部品はAD/DAコンバーター(アナログ信号をデジタル信号に、デジタル信号をアナログ信号に変換する機器)だと思います。

これの質が悪いとアナログ信号の情報はデジタル化した際にごっそり失われ、全く味気ないサウンドになってしまいます。

90年代において最高級のAD/DAコンバーターを使っているということは、今現在においてそこそこレベルのものを作っていることと同じなのです。これが音が良い主な理由だと考えています。

もちろんDSPチップの性能も当時最高クラスで、2機搭載する事でレンジの広い綺麗なデジタルサウンドを提供してくれます。



5.やはり現行の最高級機には勝てない


散々良い事ばかり書いてきましたが、欠点もあります。しかもその欠点ゆえに最新のハイエンド機(価格帯的に10万円以上)には敵わないなあと感じます。

・専用のフットコントローラー以外で操作すると音の切り替え等にラグがある(かなり致命的

・専用のフットコントローラーで操作しても多少のラグはある

・申し訳程度のシームレスチェンジ

・アナログセクションは独立回路の為、デジタルエフェクトをプリアンプの前に持ってくるといった自由な組み合わせが出来ない

・ハーモナイザーのようなメモリを食うエフェクトを使うと、他のエフェクトを使える数が極端に少なくなる

・前項でも書いたが、キャビネットシミュレーターの質が微妙すぎる

・ループの音質が微妙

・あまりにもパラメーターが多い上に操作も複雑で使いづらい(当時の機材としてはまだマシな方

・パソコンからのプリセット編集が出来ない(時代が時代なので仕方ない

そもそも比較するのは間違っている気がしますが、どうしても比べたがるのが人の性...。

ただ個人的に「ここが優れている」と思うのは、最近のデジタル系プリアンプはほぼアンプシュミレーターに特化しているのに対してGSP2000番台はオリジナルの音であるという点です。

もちろん参考にしたアンプはあると思いますが、イコライジング次第でいくらでも化けます。便利で高品質なマルチエフェクターが手に入るこのご時世に、時代遅れのGSP2112を使い続ける理由はその音の「個性」に尽きると考えています。



6.さいごに


思い入れのある機材なので長々と書いてしまいましたが、今では当然サブ機に降格しています笑

しかし「90年代のオシャレサウンド」(要するにS.ルカサー系の音)というニッチな需要にすんなり応えてくれるので未だに重宝する時があります。

どんな機材にも必ず「使いどころ」があるはずで、この時代遅れのマルチエフェクターも例外ではないと思います。

今では中古で専用FCとセットで2~3万円台で投げ売りされているので、"あの頃"のサウンドを求めている人には是非いじってみて欲しいですねえ。


せっかくなのでパーマーのDIを通してライン録りした動画を貼っておきます。


もはや幻想入りしてそうな機材の紹介、ここまで読んでいただきありがとうございました!!

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